世の中には、話し上手な人と、話下手な人がいますが、社交的で雄弁な人の話が「伝わる」とは限りません。
商談で、熱心に話して伝えても、なかなか成約に辿り着けない…
同僚と話をしたあと、何の話だったっけ?と言われる…
上司に、話が分かりにくいと指摘された…
話しているうちに、自分が何を伝えようとしていたのか分からなくなってしまった…
長い会議のあとに部下が会議で決まったことを実践しない…
同じ人から、何度も同じ質問を受ける…
ビジネスシーンでは、このような悩みを抱える人は少なくありません。
さらには、「なんでわかってくれないの?」と嘆いたり、「真剣に聞いていたのか?」と疑いをかけたり。
相手を責めるばかりでは、ストレスも溜まっていくばかりではないでしょうか。
このような気持ちを抱く人は、伝え方を間違っている可能性が高いでしょう。
なぜなら、とても主観的な感情だからです。
人に何かを伝えようとするときに、主観は相手視点に立つことを邪魔します。
伝わる伝え方は、どんなに高度な伝達テクニックを使ったとしても、相手視点なしでは不可能なのです。
自分の伝え方を振り返ってみましょう。
伝えただけで満足するのは一方通行のコミュニケーション。しっかり伝わっているかを重要視しましょう。
相手に何かを伝え、それがしっかり伝わっているなら理想の結果が伴ってくるものなのです。
伝える側として、相手に伝える意識と伝わるための配慮が必要です。
相手によって価値観も捉え方も、視点も立場も異なることを肝に銘じておいてください。
相手によって伝え方を変える意識と習慣で、伝わる効果のある伝え方を身に付けることができます。
伝わるためのいくつかの重要なポイントを押さえると、話すことが苦手と感じている人でも、きちんと相手からの理解を得ることができてくるでしょう。
冒頭で出したような悩みもきっと減らせるはずです。
コミュニケーションも円滑になり、仕事の進捗もきっとスムーズになっていくでしょう。
自分にとっても、相手にとっても良い成果や結果に繋がっていくはずです。
■ 相手の集中力を促す
人が一度に記憶できる事柄は、5〜7個と言われています。
さらに、その一つ一つを理解してもらうことを希望するなら、その数は減るでしょう。
世の中では、3つの情報にまとめるのが人の情報認識に適しているとも言われています。
それ以上になると、集中力が削がれやすくなり、2つ目は何だった?と記憶から抜けてしまったり、そんなにたくさん?と負担を感じたりする可能性が高まります。
情報のパーツのすべてがしっかり理解されないと、適切な答え、的を射た行動、正確な反応を得ることが難しくなります。何かを伝えるときには、考えてほしい情報に絞って伝えることが大切です。
■ 伝えたいことを伝えるために
伝えたいことをしっかりと伝えるためには要点を絞ります。
要点を絞っていないと、本当に大切な部分が、余計なことに埋もれてしまい、何一つ伝わらない可能性があります。
たとえ、相手のためを思ってであっても、膨大な情報を詰め込むことは逆効果になりがちです。
情報量が増えれば増えるほど、相手は理解に時間を要し、負担は大きくなるばかりです。
また、実はよくあることですが、自分が何を伝えようとしていたのか見えなくなってしまうこともあります。
費やす時間が「何のための時間だったの?」「得たものが何もない」という状況に陥りやすいのです。
■ ためらわずに要点を先に
日本人は、結論や要点を先にズバッと伝えてしまうことを躊躇する人が多いようです。
日本語の成り立ちや、オブラートに包んで対立を避ける文化などの影響も否めめせん。
現代では日本でも「要点を先」に伝えることの重要性や効果の認識が浸透してきています。
にも関わらず、習慣がないためにスムーズにこなせない人が多いのです。
相手を思いやるのであれば、勇気をもって潔く最初に伝えるべきです。
メリットは、双方にあるものなので心配する必要はありません。
むしろ、強く意識しなければならない点でもあります。
一生懸命伝えたのに、わかってもらえなかったという経験はありませんか?
■ 短くすることの重要性
短く伝えることは、ビジネスパーソンとして必須事項です。
短いほうが喜ばれるというよりも、短くなくてはならないのです。
長くなると、余計なことが入りがちで伝えるべきことが何なのか、相手が見つけにくくなります。
聞いてくれている相手は理解しようと努めてくれることが多いですから、負担をかけることになります。
それに伴って、理解までの時間も長く掛かることになるでしょう。
話が長いということは、ビジネスパーソンとしての印象をも左右してしまうものです。
長くなるという印象を抱かれてしまうと、相手はその後、会わない、関わらない、避けるということを視野に入れるでしょう。誰もが、時間を有効に効率的に使いたいと思っているからです。
■ 自分の話の全体像を考えてから話す
話が長くなることを防ぐためには、話す前の準備が欠かせません。
お客様に対するプレゼンテーションや商談、社内での対面での報告や質問、会議やミーティングでも役立ちます。
面倒に感じるかもしれませんが、慣れていくごとに準備なしでも、ある程度のことは短く伝えられるようになります。その自信が持てるまで、準備を徹底して続けてみてください。
ただ、熟練した人ほど、この準備のプロセスを省かずに、大切にしていることも確かのようです。
■ 話を短くするコツ
「一文を短くする」
自分の話の一文一文を短くすることが、全体を簡潔にすることにも効果があるようです。
主語から「。」の間が短いほど、相手は内容をキャッチしやすいのです。
要点を伝えるキーワードを含めて、引き締めた文章で伝えることを意識しましょう。
自分でも、その後の文章を続けやすいというメリットがあります。
「要約する」
前記した短い文章で話していくと、要約も容易になります。
要約は、難しいものですが、トレーニングで確実に磨いていけるスキルです。
要約とは、必要なことだけを抽出し、選抜した言葉の集合体です。
伝わりやすく、短時間での伝達が叶うでしょう。
参考:
【第3章:聴く】論理的に聴く
「欲張らない」
説明や補足は必要なことが多いですが、最小限に抑えることも重要なポイントです。
詳しく伝えることと混同しやすいので、加減が難しいところかもしれません。
話す時間を意識することがおすすめです。
200〜250文字程度の文章を話すのにどれくらい掛かるか体感で覚えてみてください。
およそ1分の長さ、200文字でカバーできることは思っているより多いものです。
30秒しかない!できるだけ短い時間で!と考えるときに、体感時間は役に立ってくれるでしょう。
ビジネスシーンでは、時間はお金以上の価値を持つことがあります。
時間もコストだという意識を持つことが大切です。
いらない言葉を削るという習慣がコミュニケーションを助けてくれるでしょう。
言葉が足りなくて伝わらなかった、たくさん話して伝わらなかった、どちらの経験が思い浮かびますか?
■ わかりやすい伝え方とは
分かりやすく伝えようと意識した経験は誰にでもあるでしょう。
一生懸命な熱弁を繰り返しているのに分かってもらえない。
多くのことを話しているうちに、自分でも言いたいことが分からなくなってきた。
詳しい説明を加えても、意図した行動に移してもらえない。
伝えたのに、聞いていないと言われる。
職場でのやり取り、顧客との商談やプレゼン、会議などでこのような経験はありませんか?
誰でも、納得していないことに契約のサインをしたり、行動したりという危ない橋は渡らないものです。
どんなに大きなエネルギーをかけても理解に繋がらなければ無駄になってしまいます。
理解してもらえなければ、ビジネスシーンでの到達すべき地点に相手を導くことができません。
それだけでなく、相手に分かりにくい=負担という印象を与えてしまうと、その後のコミュニケーションにも影響が出てくるでしょう。
伝えたいことが重要なほど、この事態は避けたいものです。
分かりやすく話すには、要点を明確に提示することと、話の順番を考えることが大切です。
■ 目的を見据えて話す意識を持つ
話す前に、自分がそれを伝える目的は何かを明確にしておきましょう。
目的は、確固たる根拠を提示できる事実を基にした、その先の希望や要望のことです。
つまり、ゴールを設定するということです。そのゴールの要点から話し始めることを心掛けてみましょう。
なんとなく話し出してしまうと、目的からどんどん遠ざかってしまう確率を高めます。
遠ざかれば遠ざかるほど、相手が理解するまでの負担が大きくなります。
影響力のない細かい部分に話を費やしたり、自分でも何を話しているのか分からなくなったりということが起こりやすいのです。
■ 構成する(フレームワークで練習)
目的を明確にしたで、話すべき要素とその順番を考えて、構成を組み立てることが有効です。
話の内容によって、さまざまな構成要素と順番が考えられると思います。
組み立てることが難しい場合は、フレームワークなどを活用して思考を慣れさせていくのも一策です。 自分の話す内容に合わせてカスタマイズしていくことも可能です。
構成を意識することのメリットは、聞き手にわかりやすく伝わるだけではありません。
話す側としても、各段に話やすくなるのです。
5W1Hを意識する
起→ 承→ 転→ 結
課題→ 原因→ 解決策→ 効果
結論→ 根拠→ 具体例
導入→ 要点→ 締め
要点→ 理由→ 事例→ 要点
特徴→ メリット→ 利益→ 証拠
問題→ 望む結果→ 解決策
理想像→ 現状→ 問題点→ 提案
状況提示→ 概要→ 詳細説明→ まとめ
話す内容の順番によって、印象が変わってくることを知っていますか?
■ 相手視点は「伝わる」ための前提条件
私たちは「伝える」ことに一生懸命になりがちです。
自分の希望や要望を、切々と語り、相手に自分が望む行動をとってもらおうとします。
頑張って伝えても、適切に伝わっていなければ、その望みが叶えられることはないでしょう。
伝えることに注力しているとき、そのほとんどが自分視点だからです。
適切に伝えるには、相手の立場に立った「相手視点」が欠かせません。
ビジネス上で関わる人の立場や役割はそれぞれに異なっています。
さらに、そのときどきで、状況や心境も異なるでしょう。
経営者の立場や視点と新入社員のそれには違いがあるはずです。
管理職とアルバイト、上司と部下、ベテランと若手、担当者と決裁者、さまざまなはずです。
そこに配慮した伝え方をすることは、伝える者として意識しなければならない要素なのです。
それによって初めて、理解への扉が開かれ、「伝わる」に繋がっていくのです。
■ 相手視点で見えてくるもの
自分の希望や要望は常に明らかです。
しかし、相手の要望やメリットとなると相手の視点に立たなければ見えません。
伝えることの中に、相手の要望を叶え、相手のメリットになることがないなら、共感も同意も得ることはできないでしょう。現金なことのように感じられるかもしれませんが、それがビジネスなのです。
相手にとって何がメリットなのかも、人や企業によって異なります。
相手の立場に立って、探っていく必要があるのです。
自分にメリットのあることなら、誰でも「聞きたがる」ものではないでしょうか。
「聞きたいこと」の提供は、その話の理解度も受け入れる度合も引き上げていくものです。
ビジネスシーンでは、メリットを提供し合うことで、お互いに繁栄することを目指します。
自分が何かを求めるのであれば、相手のメリットも考慮しなければならないということです。
■ 自分の視点は徹底排除する
相手視点に立つと言うは易し、行うは難しです。
相手はこう思うだろうな…は自分視点。
相手はこう捉えるはずだ…も自分視点。
今、相手に見えているものを見て伝える要素を決め、それらを基にして相手はどう考えるかを捻り出す必要があります。自分の視点を入れないということを徹底しなければなりません。
■ 相手視点で変わるもの
自分に何らかの目的があると考えてみてください。
目的が明確になったら、伝え方を考える必要があります。
参考:
【第4章:伝える】伝える型
それぞれの構成要素は、すべての人に同じではありません。
言い方を変えると、それぞれの立場に適した要素があるのです。
聞いてくれる相手の立場で、効果のある要素をピックアップし、組み立てて伝えるべきなのです。
相手に見えていて、魅力として映るものは何かを取り入れましょう。
コスト削減に繋がることがメリットと捉える立場
スキルアップに繋がることがメリットと考える立場
目標値に近づく可能性をメリットと受け取る立場
費用は掛かっても自社の認知度や評判を上げることがメリットとなる立場
同じ目的を達成するにも、相手によって伝え方を変える意識を持っておきましょう。
この前、相手に喜んで聞いてもらえたことは、どんなことでしたか?
■ 相手レベルに合わせた言葉
仕事で関わる人たちは、さまざまなカテゴリに分けることができます。
伝えるときには、それぞれのカテゴリを意識して、言葉を選ぶ必要があります。
同業界の人と他業界の人
社内と社外の人
同じ部署の人と他部署の人
若手(20代)、ミドル層(30〜40代)シニア層(50代以上)
経営層と一般社員
職業レベル(新人、若手、中堅、ベテラン)
代表的なものとしては、業界用語や専門用語が挙げられます。
同業の人との接点の中では、積極的に使うほうが簡潔でスムーズなやり取りを促しますし、共通認識していることは多いほど、信頼性も高まるようです。
一方で、業界の外の人に対しては、専門用語の使用を避け、それこそ中学生が聞いても同じ理解が得られるくらいの言葉に置き換える必要があります。
ビジネス用語でなくても、シニア層に対して、若者言葉で説明するとちんぷんかんぷんということもあります。
理解できない言葉があると、内容を理解してもらうことが難しくなります。
「○○って何だろう」という疑問を抱く言葉が増えるほど、集中を阻害してしまうのです。
■ 漢字を分解するとわかりやすい
ビジネスシーンでは、重要な要件になればなるほど、漢字を連ねる用語が増える傾向にあります。
しかし、そのやり取りの目的を考えると、できるだけ難しい言葉は避けることが賢い選択です。
その言葉に慣れていない人は、内容を曖昧に掴んでしまったり、理解に苦しんだりするでしょう。
漢字は、できる限り分解しましょう。同音異義語の多い漢字ほど心掛けたいものです。
また、現代で多く使われるようになったカタカナ用語にも注意を払うべきでしょう。
理解できなければ、興味を惹くことも、メリットに気付いてもらうことも、望む効果も得られないのですから。
■ 馴染みのある言葉は記憶に残りやすい
インパクトを与えるために、業界の専門用語や難しい言葉を使おうとするなら、それは間違いです。
相手にとって新しい言葉は、たとえ説明があっても記憶→理解というプロセスを要します。
言葉は、内容を表現するツールです。
伝えたいのは、その言葉自体ではなく中身のはずです。
そこにお互いの労力と時間を費やすことは、ビジネス的にはもったいないことです。
相手に馴染みのある言葉を使うことが、より印象や記憶に残りやすいことを覚えておきましょう。
相手の使う言葉を知るためのコミュニケーション、できていますか?